2018年02月22日

映画レビュー 「祈りの幕が下りる時」 福澤克雄監督

祈りの幕が下りる時
TVドラマシリーズ「新参者」で映像化が始まった東野圭吾原作による加賀恭一郎シリーズの最新作(にして,最終作かな?)。

葛飾区小菅の木造アパートで女性の腐乱死体が発見される。被害者は滋賀県在住の押谷道子(中島ひろ子),死因は絞殺。部屋の借り主は越川睦夫,だが行方不明。捜査に当たった警視庁捜査一課,松宮(溝端淳平)は,道子が殺されたと思しき時期に荒川を2キロほど下った河川敷で焼死したホームレスとの関連を疑うが,死体のDNAは越川の部屋の慰留物とは一致しなかった。

道子が上京した理由を調べるため彦根を訪れた松宮は,彼女が中学の同級生で演出家である浅居博美(松嶋菜々子)に逢いに来たことを知る。博美は道子が上演中の「異聞・曾根崎心中」の初日に訪ねてきたことを認めたが,席を用意してあげられずその日のうちに彦根に帰ったと思っていた,と言う。

しかし松宮は博美の事務所で意外なものを目にしていた。それは従兄弟で現在警視庁日本橋署に勤務する加賀恭一郎(阿部寛)が写った写真。場所は警察の道場か,加賀は剣道着姿で同じ格好をした十人程の子供たち,そして浅居博美と一緒にフレームに納まっていた。

その足で加賀の元に向かった松宮は,その写真が十数年前、博美が全日本選手権を獲ったこともある加賀に子役への剣道指導を依頼した時のものであることを知る。問わず語りに事件を概要を語る彼に,加賀は焼死体と一致しなかった越川のDNAはなにから採取したものかと質す。ありがちな歯ブラシなどから取ったものであれば偽造された可能性もあるのでは,と。

この加賀の読みが当たり,また越川の部屋に残されたカレンダーの各月に残された橋の名前のメモが十数年前に仙台で横死した加賀の母親・百合子(伊藤蘭)の遺品に書かれたもの一致したことから,捜査一課は加賀を捜査本部に招聘。加賀は百合子が死の直前に心を通わせていた綿部という男が死んだ越川ではないかと推理するのだが…。

かなり原作に忠実な映像化。小説の段階で取りざたされた松本清張の「砂の器」(映画は野村芳太郎監督)を意識してるてな評も読んだが,そこらは誰が撮ってもこうなるんぢゃないかとも思えた。たしかに面白いけど「小説を判りやすく絵解きしただけ」という印象がぬぐえない。面白いんだけどね。



「祈りの幕が下りる時」公式サイト

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2018年02月17日

映画レビュー 「嘘を愛する女」 中江和仁監督

嘘を愛する女
ワタシは基本,予告編で「あ,この映画観よう」と決めるほうではない。そりゃたまには「下手な予告編だなぁ」と思うものもないではないが,予告編つうのは当然ながら「いいとこ取り」の宣伝なのだから,まぁ頭のなかでナンボか割り引いて観てるわけだ。

この映画はそんなワタシが珍しく予告編で「観よう」と決めたもの。

2011年3月11日,震災の混乱のなか気分が悪くなりその場に座り込んでしまったキャリアウーマンの川原由加利(長澤まさみ)。その彼女に声をかけ,ピンヒールで会社まで歩かなければならない彼女に,家が近いからと履いていたスニーカーを提供して去った男・小出桔平(高橋一生)。

しばらくして再会した二人は恋に落ち,食えない研究医である桔平が由加利の部屋に転がり込んで5年。二人の行く末を案じた由加利の母が上京し,桔平と会うはずだったその日約束の場所に桔平は現れず,深夜になって由加利のもとを刑事が訪ねてくる。

桔平はくも膜下出血を発症して路上に倒れ病院に運び込まれたが,警察が身元を調べたところ所持していた運転免許証は偽造。記載内容は由加利の部屋の住所以外のすべてが「嘘」だった。

病院のベッドで昏睡を続ける桔平の傍,途方に暮れた由香里は探偵・海原(吉田鋼太郎)を雇って彼の素性を調べさせる。調査を始めた海原はまもなく桔平を「先生」と慕う女子大生・心葉(川栄李奈)に遭遇。彼女の言葉を辿って,桔平がコインロッカーに預けていたパソコンにたどり着く。

海原の助手・キム(DAIGO)のハッキングによってパスワードを解明されたそのマシンには700ページにも及ぶ未完の小説が入っていた。そこに描かれた「沈む夕陽と重なって灯台が燃えるロウソクのように見える」情景を手掛かりに,桔平の本当の姿を求めて由加利は瀬戸内に旅立つ…。

予告編だと「え,北朝鮮のスパイ?」てなこと(あんまり高橋一生のイメージぢゃないが)を想像しないでもなかったのだが,物語は彼・桔平の来歴を辿り,彼が封印した過去の悲しい記憶を解き明かしていく。長澤まさみと吉田鋼太郎のコンビが演じるこの「ロードムービー」部分がとってもいい。それに高橋一生は予告編でも使われたあの笑顔で対抗。実はオレ,あの「破顔一笑」でこの映画観ようと決めたんだよね。

最後にひとつだけ心配になったのは,勤め先も偽物で当然ながら国民健康保険料も払ってない彼の入院費。だいたいいくらくらいになるんだろう?


「嘘を愛する女」公式サイト
posted by hiro fujimoto at 10:10| Comment(0) | 映画

2018年02月04日

映画レビュー 「スリー・ビルボード」 マーティン・マクドナー監督

スリー・ビルボード
エビングというミズーリ州の小さな町(調べたが見つからなかった。架空の町らしい。そりゃそうか)。幹線道路から外れ,「地元民かボンクラ」しか通らなくなった道沿いに1980年代から放置されていた3枚の立て看板にある日突然文字だけの「広告」が掲示される。

「レイプされて焼き殺された」
「犯人は捕まっていない」
「どういうこと,ウィロビー保安官?」

それは7ヶ月前にこの町で起きたレイプ殺人事件の捜査が進展しないことに対する問いかけ。広告の主は被害者アンジェラの母親ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)だった。

事件については彼女に同情している住民たちだったが,非難の矛先となった保安官ウィロビー(ウディ・ハレルソン)が評判のいい人格者であり,かつ(本人はそれが知れ渡ってることを知らないが)末期の膵臓癌で余命いくばくもないことからこの行為に憤慨。息子のロビー()は学校で嫌がらせを受ける。

ミルドレッドのもとを訪れたウィロビーは事件の証拠がDNAだけで,前歴のある者たちのデータベースではヒットしなかったこと。それに病に冒された自分にはあまり時間が残っていないことを打ち明ける。がミルドレッドは「必要なら国中の男のDNAを採取しなさいよ。それにあんたのガンのことは町中が知ってる」とにべもない。

人種差別主義者で乱暴者ながら上司のウィロビーのことは敬愛している保安官助手のディクソン(サム・ロックウェル)は,ミルドレッドに看板を貸した広告屋のレッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)を脅迫,おまけに彼女の友人を微罪で逮捕し,保釈に応じないという嫌がらせを働く。そんな騒ぎのなか,血を吐いて倒れたウィロビーは自分の死期をさとり,家族とのおだやかな1日を過ごした後で自らの命を絶ってしまう…。

異論もあるだろうがオレの見立てではこれ「ブラック・コメディの大傑作」である。事件は凄惨だし人種差別,マイノリティ差別の表現には正直鼻白む部分もないではないが(この辺はオレがカラードだからか?),「人間が生きていることの滑稽さ」を描き切って見事である。

「スリー・ビルボード」公式サイト

posted by hiro fujimoto at 10:40| Comment(0) | 映画