2018年04月29日

映画レビュー 「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」 リュック・ベッソン監督

ヴァレリアン

最近,リュック・ベッソン作品イマイチなことが多かったので,予告編を観てスルーしようと思っていたんだが,信頼できるスジから「これは面白い,でも宣伝が下手だから客が入ってない,従って上映期間が短い,観に行くのならお早めに」という報せが入ったので焦って観に行った。

いやなかなか面白い。

もともとはベッソンの「フィフス・エレメント」などでコンセプト・デザインを担当したフランス人漫画家ジャン=クロード・メジエールが1960年代に発表した「ヴァレリアン&ロールリンヌ」という漫画。

このシリーズの大ファンだったベッソンは90年代からこの作品の映画化を目論んでいたが,フィフス・エレメントの経験から「現在の技術であれを作ろうとしてもチャチくなるだけだ」と先延ばしにしていた,らしい。

ストーリー・ラインはやたら錯綜しているのだが,舞台となるのは「千の惑星の都市」と呼ばれるほど雑多な種族がひしめき合っている巨大な宇宙ステーション「アルファ」。

ある日ここで原因不明の放射能汚染が発覚,国防大臣(なんとハービー・ハンコックだ)は銀河きっての腕利きとして知られるエージェント,ヴェレリアン(デイン・ハーン)とその相棒ローリレーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)に原因の調査と問題の解決を命じる。しかも10時間以内に。

あとはもうおもちゃ箱をひっくり返したような展開。一つ一つのシーンに笑いこけたり目を見張ったりしながら,うっかりすると今なんで主人公たちがここでこんなことをやってるのかわかんなくなること再々。まぁ最後に一応のスジは通るんだけどね。

冒頭のスジが言うように日本公開以前に興行的には失敗と断じられており,批評家からの評価も低い。いやでも面白い。

なんつか「銀河ヒッチハイク・ガイド」(原作はイギリスのラジオ・ドラマ)に通じるような,まるであの映画のポジみたいなテーストの中に「スター・ウォーズ」のようなアメリカ作品にはない,欧州的陰影(というか底意地の悪さというか)があってそれが「変にいい」のである。



「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」オフィシャルサイト

posted by hiro fujimoto at 19:11| Comment(0) | 映画

2018年04月01日

映画レビュー 「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」 スティーブン・スピルバーグ監督

ペンタゴン・ペーパーズ
邦題になっているペンタゴン・ペーパーズと言うのは正式名称「ベトナムにおける政策決定の歴史、1945年-1968年」,ルーズベルト時代からのアメリカの対ベトナム政策に関する文書。

詳細を知りたい人は自分で読んでもらいたいが(2011年に機密指定が解除されているので全文WEBで読める。読まれて困るものはちゃっかり「紛失」しちゃうどっかの国よりこう言うとこ誠実だなアメリカは),早い話,これが公表されると政府機関の分析の結果「ベトナム戦争は勝てない戦争である」と言うことはとっくの昔に分かっていたのに歴代政権はズルズルと若者たちを戦場に送り続けた,と言うことがバレちゃう文書なのね。

1971年,この報告書の執筆者の一人ダン・エルズバーグ(マシュー・リス)は所属するランド研究所からこの文書を持ち出してコピー。経路は不明だが,この一部がニューヨーク・タイムズに渡り,同紙はこれを元にした報道を開始する。

「タイムズにやられた!」

ニューヨーク・タイムズをライバル視するワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)はこの記事に激怒。奴らが持っている文書をウチも手に入れろ,と記者たちの尻を叩く。その中にはかつてランド研究所でエルズバーグと同僚だったベン・バグディキアン(ボブ・オデンカーク)もいた。バグディキアンはタイムズの記事の内容からこの漏洩にエルズバーグが関わっていることを確信,旧友の行方を追い始める。

記事は時のニクソン政権にとっても激震だった。大統領の指示を受けた司法省はタイムズの記事の差し止めを求めて連邦地方裁判所に訴えを起こす。同じ頃ボストンでエルズバーグに再会したバグディキアンは,彼が持ち出した文書のほとんどを入手してワシントンに持ち帰るが,それを元にした記事を掲載すればポストもまたホワイトハウスを敵に回すことは必定だった。

当時,ワシントン・ポストの経営は思わしくなく,死んだ夫に代わって社主を勤めていたキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は株式の公開を準備中。記事を出して差し止めを食らえば出資者の不安要因になることが予想された。それにこの文書作成の責任者である国防長官ロバート・マクナマラ(ブルース・グリーンウッド)夫妻はキャサリンの辛い時期を支えてくれた大事な友人でもあった…。

今更なんだがスピルバーグは達者だなぁと思う。出演作を何本観たか数えられないくらいのメリル・ストリープとトム・ハンクスなのに,これまでに彼らが演じた誰にも似ていない。いかにも71年当時のワシントン・ポスト社主,キャサリン・グラハムと同紙編集主幹のベン・ブラッドリーに見えてきちゃうんだよなぁ(いや二人の顔を知ってるわけぢゃないんだけどさ)。

ラスト,翌年のウォーターゲート事件発覚の発端となる映像が流れ,この映画があの「大統領の陰謀」(アラン・J・パクラ監督)の「前日譚」であることが示唆されるんだが,その直前にホワイトハウスの窓に映るニクソンと思しき人影が電話で「ワシントン・ポストの記者をホワイトハウスから締め出せ,妻に注意しろ,妻は入れてしまうから」みたいなことを言う。早口で英語聞き取れなかったんだがホントにそう言ってたのか,それとも字幕の「超訳」ですかね?


「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」公式サイト

posted by hiro fujimoto at 10:36| Comment(0) | 映画

2018年03月18日

映画レビュー 「シェイプ・オブ・ウォーター」 ギルレモ・デル・トロ監督

シェイプ・オブ・ウォーター
「1/8計画」の次は「海底原人ラゴン」かよ,と思いながら観に行きましたアカデミー作品賞受賞作。

米ソの宇宙開発競争華やかなりし1962年,ボルチモア郊外に作られた政府の研究施設。主人公のイライザ(サリー・ホーキンス)は夜間の清掃員としてそこで働いている。子供の頃に喉に負った傷の影響で声を出すことができない彼女は昼間アイマスクをして眠り,目覚まし時計で目覚め,隣人で画家のジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)と食事し,バスで出勤する。

ある晩,彼女が掃除を担当している部屋に大きな水槽が運び込まれてくる。そこに入れられているのは,ストリックランド(マイケル・シャノン)が南米で捕らえた人間に似た水棲生物(ダグ・ジョーンズ)。現地では神のように崇められているという。施設を統括する軍の上層部はこの生物の特殊な呼吸機構を人間を宇宙で活動させる仕組みに応用できないかと考えているのだ。

イライザは一人でこの部屋を清掃するうち生物と出会い,手話で意思の疎通を試みる。ゆで卵を与え,音楽を聴かせ流うち,彼女は「声が出ないという障害など関係なくありのままの自分を見てくれる」この異形の生き物と恋に落ちてしまう。しかしストリックランドらは研究のため彼を解剖する予定であった。

お察しの通り,イライザとその仲間たちは解剖される予定の生き物をなんとかして救おうと奔走する。それはひとまず成功するが,失点回復に全てを賭けるストリックランドの執念の追跡で…。

非常に分かりやすいのは「マイノリティ」の物語,という構図である。障害を持つイライザ,職場で彼女の唯一の友人である黒人のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー),隣人のジャイルズはゲイだし,生き物に同情的なホスステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)には他人に明かすことのできない秘密があり,水棲生物は「人間ですら」ない。

そして悪役ストリックランドもまた,心に空いた穴を埋められない傷ついた男であることを読んでいる本(自己啓発本だ)やキャデラックの買わされ方などで観客に印象付けるデル・トロの巧さ。まぁアカデミー作品賞,監督賞にふさわしいんぢゃないのこれは。

で,話は変わるがまたウルトラQネタを取り上げるんであればオレのオススメは「バルンガ」です。是非ご検討ください(誰にともなく)。


「シェイプ・オブ・ウォーター」公式サイト

posted by hiro fujimoto at 09:59| Comment(0) | 映画