2017年11月11日

映画レビュー 「IT・イット ”それ”が見えたら,終わり。」 アンディ・ムスキエティ監督

IT
スティーブン・キング作品の映像化は当たり外れが激しい。特にこの「IT」,1990年に作られたTVドラマ(日本で最初に放送されたのはテレビ東京だったっけ。あとでNHK BSで前後編の完全版が放送された)のガッカリ感はちょっとキツかった。

その「IT」が劇場版として撮り直され,全米でかなり評判がいいという話は聞いていた。監督は「MAMA」(2013年)のムスキエティ。あの子役遣いの秀逸さ,これはちょっと期待できそうではないの,とムビチケ買って観に行きましたがな。

1988年,大雨の日。病に臥せっていた12歳の少年ビル(ジェイデン・リーバハー)は6歳の弟ジョージィ(ジャクソン・ロバート・スコット)にせがまれて紙の船を作る。水に浮かぶようにワックスを塗り,船は女性名詞だから「彼女」って呼ぶんだぞと教える。それに頷き黄色い雨合羽と長靴を履いて外に飛び出して行った弟はそれきり帰らなかった。誰も目撃者はいなかったが,彼は下水道に潜んでいたピエロ,ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)に引き込まれてしまったのだ。

翌89年の夏,吃音を持つビルはいろいろな理由で周囲からいじめられている仲間,ユダヤ人のスタンリー(ワイアット・オレフ),メガネのリッチー(フィン・ウルフハード),マザコンのエディ(ジャック・ディラン・グレイザー)たちとつるんでいるが,たちの悪い上級生ヘンリー(ニコラス・ハミルトン)らのグループに目をつけられる。

ヘンリーたちから逃げ回る過程で同じように彼らの標的にされている転校生のベン(ジェレミー・レイ・テイラー),黒人のマイク(チョーズン・ジェイコブス),それから女子の間でアバズレと噂を立てられているベバリー(ソフィア・リリス)が仲間に入る。が,ともに夏を過ごす彼らにはいじめられっ子であることとは別にある共通点があった。

それは一人になったとき,自宅の地下室や図書館,通学途中の人気のない道などで「IT(それ)」としか呼びようのない恐怖の存在に出会うこと。やがて彼らはそれぞれが見ている「IT」が,姿は違えど実体は同じものであり,ジョージィの事件を発端に街で相次いでいる子供の失踪事件に関係があることと,そしてこの街では似たような事件過去27年周期で起きていることを知る…。

時代を原作から30年ほど現代側にシフトし(つか原作の「現代」は当然執筆された1980年代なんだけどさ),かつその「現代」と「過去」が複雑に絡み合う構成を捨ててこの一作はすべて「過去」を語るものとした,これは英断。物語の舞台にしてキングの故郷でもあるメーン州の短い夏,少年たちの交友,葛藤があの「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせる。

そして肝心の「主役」,ペニーワイズ。これはコワい。ムスキエティが「MAMA」でも使ってた「物体だが情念だかよくわからない黒い帯状のなにか」の視覚効果にくわえてペニーワイズを演じるビル・スカルスガルドの笑う口元が…。ホラー好きなら是非劇場へ。


「IT・イット ”それ”が見えたら,終わり。」オフィシャル・サイト

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2017年11月04日

映画レビュー 「ブレードランナー2049」 ドゥニ・ヴィルヌーブ監督

ブレードランナー2049
作られないだろうと思われていた「続編」である。P・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を原作とした「ブレードランナー」(リドリー・スコット監督)から35年,物語の中でも30年の歳月が経過,世の中は激変している。

アメリカ,ロス・アンジェルス。2019年のあの事件の3年後の2022年,長寿命に「改良」されたネクサス8型レプリカントたちが叛乱,いわゆる「大停電」を引き起こし,電子化されていた多数の記録が失われると共にタイレル社は崩壊。レプリカントの製造が永久的に禁じられる。

しかし2036年,タイレルの遺産を引き継いだ天才科学者ニアンダー・ウォレス(ジャレッド・レッド)が人間に絶対服従する新型ネクサス9型を開発,レプリカント禁止法が撤廃され,再びレプリカントは世に溢れ出した。

そして2049年,ネクサス9型レプリカントの一人であるKD9-3.7,通称K(ライアン・ゴスリング)は「大停電」の後も生き残っている旧型レプリカントを追跡・破壊するブレードランナーとして働いている。

ある日,密告によって居場所を突き止められたネクサス8型サッパー・モートン(デイヴ・バウティスタ)の元に向かった彼は,今際の際のモートンの言葉を手がかりに,地中深く埋められたレプリカント女性の骨を発見する。なんとそれには帝王切開で子供を取り出した痕跡があった。

不可能なはずであるレプリカントの「繁殖」は社会に危機をもたらす。報告を受けたKの上司ジョシ警部補(ロビン・ライト)はKに,そのとき生まれた子供の発見・抹殺を命じる。

母体の記録を求めてウォレス社を訪れたKは,そこでこの「母親」が30年前,追手であるブレードランナー,リック・デッカード(ハリソン・フォード)と恋に落ちて共に逃亡したレイチェル(ショーン・ヤング)であることを突き止める。

が,それは同時にそれは,レプリカントの繁殖を目指しているウォレスに手がかりを与えることに。彼は側近のレプリカント,ラブ(シルヴィア・フークス)に,警察より先にその子供を発見し連行するように命じるのだった。

と,ネタバレなしで書けるのはここまでかと思うんだが,いろいろなモチーフやオマージュ,伏線などが重層的に描かれていてお腹いっぱい。

プロットは「出エジプト記」(ただしその前半だけ)か。が,聖書に大した思い入れのないオレには,Kたちレプリカントが「魂」を持つ(と信じている)人間に憧れ,そのKの「娯楽品」であるジョイ(アナ・デ・アルマス)がKたちの持つ「身体」に憧れる,という連鎖の方が切なかった。

観てない人には意味不明だろうからこれはいいと思って疑問を一つ,あの蜂たちはどこの花から蜜を集めてくるんだろう?


;「ブレードランナー2049」のオフィシャルサイト

posted by hiro fujimoto at 09:20| Comment(0) | 映画

2017年10月08日

映画レビュー 「ナミヤ雑貨店の奇跡」 廣木隆一監督

ナミヤ雑貨店の奇跡
とある地方都市の商店街の外れ,廃業し空き家になってずいぶん経った風情の雑貨店に,付近で強盗を働いたばかりの若者三人,敦也(山田涼介),翔太(村上虹郎),幸平(寛一郎)が忍び込む。逃走に使うはずだったクルマが故障したため朝までここに隠れていようという目論み。

店内で見つけた古い週刊誌の記事によると,この雑貨店の店主(西田敏行)は商売のかたわら,寄せられるさまざまなヒトの悩み相談をやっていたらしい。他人に知られたくない相談者は,悩みごとを手紙にしたため,閉店後シャッターの郵便受けから差し入れる。すると翌朝,店脇の牛乳箱に回答が入っていたのだという。

と,その時,店のシャッターの内側にポトリと一通の手紙が落ちる。「店が閉まって30年以上経ってるのに,まだ相談を入れるヤツがいるのか」といぶかりつつその手紙を読み始める三人。リーダー格の敦也は否定的だが,翔太と幸平はこの相談者,音楽への夢をあきらめようとしているミュージシャン志望の若者の悩みに回答を書こうとする。

やがてあるきっかけから,この相談者が,三人組が育った児童養護施設「丸光園」にとある関係があったこと,というかこれから関係すること,つまりはこの相談の手紙が遥か過去からのものであることが明らかになる。それに気付いた三人は,次に投函された相談に対し持てる過去の知識を総動員して「応援」しようとするのだが…,

原作のエピソードを絞り込み,過不足なく劇映画の尺にまとめたなぁという印象。相談者のひとり「魚屋ミュージシャン」が作曲した設定になっている主題歌「REBORN」(もちろんホントは山下達郎)の使い方も素晴らしい。ミュージシャンと言えば頭脳警察・PANTAが丸光園の園長役で出てきたのにはびっくりした。


「ナミヤ雑貨店の奇跡」公式サイト

posted by hiro fujimoto at 10:10| Comment(0) | 映画