2017年01月17日

ブックレビュー 「フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人」 速水健朗著

フード左翼とフード右翼
例えばである。新聞の左翼と右翼を考えてみよう。赤旗とかの政党機関誌は除外するとして,朝日が左翼,産経が右翼という分類でまぁ異論はあるまい。雑誌なんかも新聞と同じ基準で色分けできる。作家なら大江健三郎は左翼で石原慎太郎が右翼,おっとイシハラはむかし三島由紀夫に「天皇なんか尊敬してねぇ」とか言ってたっけが。

とにかくこの色分けをいろんなものに当てはめていく。映画ならパラマウントは左翼でフォックスは右翼,音楽ならジャズが左翼で演歌が右翼,OSならLinuxが左翼でWindowsが右翼,酒で言えば焼酎が左翼でブランデーが右翼てな具合に。いや,別に根拠もへちまもなく書き連ねてるのでそこらで「なんでブランデーが!」とかメンタマとがらせないように。

オレはこんなのとことん印象論というか,落語の「やかん」にでてくる「こち」の謂れみたいなもんみたいなもん(「あの『こち』って魚はなんで『こち』なんですかね?」「こっちに来るから『こち』ぢゃねぇか」「それぢゃ向こうに泳いでったらどうすんです?」「そういうときはおまえが向こうに回ればいいんだよ」ってやつね)ぢゃないかと思うんだが,本書の著者はそうは考えなかったのである。

とりあえず世の中の「食」というものすべてを思いつくまま,地域主義→グローバリズムを横軸に,ジャンクフード→健康指向というのを縦軸にとったマトリックスの上に配置する。例えばマクドナルドのハンバーガーはグローバリズムでジャンクフードという位置に,スターバックスはグローバリズムだけど健康指向の真ん中あたりに,地域主義で健康指向という象限にはベジタリアンやスローフード運動を配置してくという具合。

手法自体はピエール・ブルデューがあの「ディスタンクシオン」でやったのに似ている。が,その配置が恣意的すぎて蓋然性が感じられず,ひたすら「あらそうですか」と思うしかない図ができあがる。

その怪しげな図をもとに著者は地域主義且つ健康指向をフード左翼,その逆のグローバリズム且つジャンクフードをフード右翼と位置づける。かくしてめでたくもオーガニックカフェでランチをとるアナタはフード左翼に,ラーメン二郎に列を作り注文の仕方から食い方にまで講釈をたれるキミはフード右翼ということになる。え,オレはどっちも食うけどどうしたらいいんだって? 知らないよ,オレは逆にどっちも食わないし。

ライフスタイルとしての有機農法などが,実は都市の富裕層によって支えられている現実のルポルタージュや,増え続ける世界人口に食を行き渡らせることのできる可能性があるのは自然農法などではなくて遺伝子組み換え作物ではないのか,という指摘など,ところどころ読むに値する論考はある。の・だ・が,途中から,おそらく最初は「ツカミ」っぽい意味でぶちあげたであろう題名の「左翼」「右翼」の概念に著者自身が振り回されて議論の着地点を見失った感じ。さらっと読めてそれなりに面白いが,残念ながら浅い。


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posted by hiro fujimoto at 08:50| Comment(0) |

2017年01月16日のつぶやき




posted by hiro fujimoto at 00:01| Comment(0) | 日記