2016年09月06日

映画レビュー 「アイガー北壁」 フィリップ・シュテンツェル監督

アイガー北壁
1936年,絶頂期を迎えたドイツ・ナチス政権は,開催を目前に控えたベルリン・オリンピックに向けて更なる国威の発揚を計るべく,登攀に挑戦する者をことごとく拒み,未だ前人未到にして「殺人の壁」と呼ばれていたアイガー北壁を征服した者に,オリンピックで金メダルを授与すると発表した。このニュースは世界中に配信され,アイガーがどこにあるのか知らないような人さえ,誰がその栄冠を掴み取るのか,と話題になる。

ベルリン新聞社にアシスタントとして勤務していたルイーゼ(ヨハンナ・ヴォカレク)は,登攀成功の第一候補として名前の挙がったドイツ人コンビ,トニー・クルツ(ベンノ・フュルマン)とアンディ・ヒンターシュトイサー(フロリアン・ルーカス)の幼馴染みであることから,上司アーラウ(ウルリッヒ・トゥクール)の命で2人に挑戦を勧めることになる。アンディは乗り気だったが,トニーは前年ドイツを代表するアルピニストだったゼドゥルマイヤーとメーリンガーが北壁に挑んで命を落としたことをあげ,挑戦に否定的な態度をとる。

結果を出せずにベルリンに戻ったルイーゼだったが,プライベートで撮っていた写真の腕を見込まれ,ナチ党員のオーストリア人登山家,ヴィリー・アンゲラー(シーモン・シュヴァルツ)とエディ・ライナー(ゲオルク・フリードリヒ)の挑戦を取材に行くアーラウの助手として抜擢される。7月14日,アイガー北壁山麓のホテルに到着したルイーゼは,休暇を暮れない勤め先に辞表を出して挑戦にやってきたトニーとアンディに遭遇。アタック直前,トニーはルイーゼの部屋を訪ね,彼女にこれまでの登攀記録を託す。

7月18日午前2時,絶好のコンディションと判断したトニーはアンディを起こして登攀を開始する。これに気づいたオーストリア人の2人も後を追うが,間隔を詰め過ぎたため先行する2人が落とした石のためにヴィリーが頭に傷を負ってしまう。下山を勧める相棒エディの言葉に耳を貸さず先を急ごうとするヴィリー。4人はアンディがトラバースに成功した地点(今は彼の名を取って「ヒンターシュトイサー・トラバース」と呼ばれている)で合流し一緒に山頂を目指すが,天候が急変し…。

しかしこれ,スゴイ映画ですぜ。オレも今までそれほど多くの山岳映画を観てきたわけぢゃないけれど,この映画の映像のリアリティがダントツであることはもう間違いないと思うもの。史実だから書いちゃうと,結局4人は天候に阻まれて下山を決意するんだが,怪我と疲労でそれもままならない。アンディが往路で自分が楽々超えたトラバースを超えられないシーンでは,椅子に座ってるくせにこっちのカラダが揺れるというか,足に力が入っちゃう。

和田誠さんだったら「お楽しみはこれからだ」に書きそうなセリフもある。麓のホテルから望遠鏡で見ていて4人の登頂断念を知って帰ろうとしていたアーラウが今度は遭難の可能性を知り,栄光の瞬間の代わりに悲惨な結末を記事に書ける,と喜ぶ。居合わせたオーストリア人の客が眉をひそめて「記者である前に人間ではないのか」と言うと彼は答える。「もちろん人間さ,時々はね」。

「アイガー北壁」をAmazonで探す。

posted by hiro fujimoto at 07:59| Comment(0) | 映画

2016年09月05日のつぶやき








posted by hiro fujimoto at 00:01| Comment(0) | 日記