
首都ソウル,漢江(ハンガン)のほとり汝矣島(ヨイド)にそびえ立つ地上108階,448メートルの超高層ビル「ザ・タワースカイ」。快晴のクリスマスイブ,施設管理チーフのデホ(キム・サンギョン)は一人娘のハナ(チョ・ミナ)を仕事場に招待。自分が思いを寄せて再婚を考えているフードモールのマネージャー,ユニ(ソン・イェジン)に引き合わせようとしていた。
そんな中,厨房で小火騒ぎが発生。これがきっかけで60階以上のフロアのスプリンクラーに水が循環していないことを知ったデホは,やってきたハナの相手をユニに任せて急ぎ原因を調査。外壁をめぐる給水管の凍結を発見して上司に報告するも返事は「今日はパーティだ!」。独断で少しでも多くの消火器を集め始める。
やがてクリスマスパーティが始まる。派手な演出を好むタワースカイのオーナー,チェ会長(チャ・インピョ)は,上昇気流の発生を理由に飛行をしぶるヘリコプター部隊を政治力で動かし,晴天の空から人工雪を降らせてイベントを盛り上げさせるが,ヘリの一機が気流に捕まってコントロールを失いタワー外壁に激突。あっという間に大火災が出来する。
報せを受けて現場に急行する汝矣島消防署の面々,その中にはこの日この署に配属されたばかりの新人消防士ソヌ(ト・ジハン),そして過去に数々の現場で奇跡的な救助活動を成功させてきた「伝説の消防士」,カン・ヨンギ隊長(ソル・ギョング)の姿も。特にヨンギは,この火災が起きなければ結婚以来初めてクリスマスイブを妻と過ごせる予定だった。
ヘリコプターが突っ込んだのはスプリンクラーがまったく作動しない63階,ハシゴ車が届くのは19階まで。そこからは消防士たちが自力で火元に近づくしかない。65階のレストランで助けを待つハナとユニ。このパニックの最中,上階に住む国会議員夫妻とその飼い犬の救助を優先させようとする総指揮官。タワー崩壊の危機に動顛し中に人がいることを承知で防火シャッターを作動させるチェ会長。
基本はあの名作「タワーリング・インフェルノ」の現代版。レビューはどうしてもあれとの比較になってしまう。まず映像,従来の特撮技術にコンピュータ・グラフィックを加えた映像の迫力は素晴らしい。70階にあるツインタワーのもう片方への連絡橋のシーンなど思わず手に汗握ってしまう。あの問題作「光州5・18」のキム・ジフンが監督だけに,モブ・シーンの演出も見事。
ただ,惜しむらくは…これって韓国映画一般にその傾向があると思うんだが,善人に比べて悪人というか悪役たちの人物像が平板で類型的。金太郎飴よろしく人格のどこを切ってもロクデナシって人物は判りやすいがリアリティを損ね,物語に薄っぺらな印象を与えてしまう。チェ会長にしても国会議員にしてももそっとニンゲンとしてなんかないのか,という気になっちゃうんだよねぇ。
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