2016年08月13日

映画レビュー 「トガニ 幼き瞳の告発」 ファン・ドンヒョク監督

トガニ
韓国南部の地方都市,ムジン。大学の恩師の紹介で,霧で有名なこの町の聴覚障害者学校,慈愛学園に美術教師の職を得たカン・イノ(コン・ユ)。画家になるという彼の夢を支えた妻を亡くし,生活の為に幼い娘を老母に預けてやってきた彼は,着任早々「就職させてやる見返り」として多額の寄付金を要求され,おびえて落ち着かない表情の子供たちの様子にも不審を抱く。

ある夜,仕事を終えて帰宅しようとした彼は,学内のトイレから女子児童らしき悲鳴を聞きつける。彼が扉を開けて確認しようとするとやってきた夜間警備員がそれを押しとどめ「ここの子らは退屈すると大声をあげて遊ぶんです」と。数日後には同僚教師のパク(キム・ミンサン)がミンス(ペク・スンファン)という少年をいたぶるように殴りつけているのに出くわすが,家を売って就職の為の寄付金を工面してくれた母親を思い,出かけた言葉を飲み込んでしまう。

しかしその沈黙にも限界がやってくる。軽い知的障害のある少女ユリ(チョン・インソ)に手をひかれてたどり着いた放課後の洗濯室。そこでは寮を所管する校長の愛人が,ユリが姉のように慕うヨンドゥ(キム・ヒョンス)の顔を回る洗濯槽につっこんでいた。「言うことをきかないから『しつけ』をしていた」とうそぶく女を押しのけ,ぐったりした少女を抱き上げたイノは町に来た日に偶然知りあった人権センターの幹事ソ・ユジン(チョン・ユミ)に連絡する。

そして彼女が病院でヨンドゥから聴き出した驚愕の事実。孤児である彼女,親に知的障害のあるユリは校長(チャン・ガン)とその双子の弟である行政室長(チャン・ガンの二役)に,そしてミンスと先日列車に轢かれて死んだミンスの弟はパクによって性的虐待を受けていた。あの日トイレで泣き叫んでいたのは校長に陵辱されていたヨンドゥだったというのだ。ユジンは早速市役所,教育委員会,警察などにこの件を訴えるが,親の代から地元の名士である校長兄弟を相手に当局は動かない。業を煮やしたユジンは少女の証言をTVに持ち込み,市を挙げての大騒ぎとなってようやく裁判がはじまるのだが…。

信じられないかも知れないが実話をもとにした映画である。映画は実際にそうなった通りの「正義なんかこの世にない」という結末を伝えるが,2011年の公開によって世論が沸騰。再調査が行われ遂に学校は閉鎖され当事者は逮捕される。政府も動き,11月には障害を持つ少女に対する虐待行為に関する法律(通称トガニ法)が成立した。

障害のある子供たちを預かる学校で,教師や関係者による虐待が行われる。これって似たような事件が日本でもあったよね(1995年に発覚した千葉県船橋市の恩寵園事件)。そしてあの事件でも裁判はこんな風だった。被害者である子供が知的障害をもつことからその証言の信憑性が問題にされたり,長期に渡った虐待行為のほんの一部しか起訴対象にならなかったり。当初行政(千葉県)は虐待を訴えて逃げ出してきた子供たちを虐待の当事者がいる施設に戻そうとしたがその責任は問われていない。

「トガニ 幼き瞳の告発」をAmazonで検索。


posted by hiro fujimoto at 18:46| Comment(0) | 映画

2016年08月12日のつぶやき








posted by hiro fujimoto at 00:01| Comment(0) | 日記