2016年08月01日

ブックレビュー 「自然はそんなにヤワじゃない-誤解だらけの生態系」 花里孝幸著

自然はそんなにヤワじゃない
世に言うエコのキャッチフレーズ,「地球にやさしい★△◎■」というのに昔から違和感があった。それも「ガソリン車の代わりに電気自動車っていうけど,その電気を発電するために燃やしているものはなんなの?」てな枝葉の話ではなくて,もっと根本的というか,プリミティブなところで「うまく言えないけどなんか変ぢゃね?」的なものがあるよなぁ,と。

たとえばみんながキライな(もちろんオレも嫌いだが)ゴキブリだが,見方によってはあのムシ,都会に暮らすニンゲンにとって,最も身近な「自然」のひとつではないの。かつてイシハラ都知事(当時)が憎んでやまなかったカラスも,都会で普通に目撃できる数少ない「野鳥」ではある。ウチの近所では見たことないが(これからも見たくないが)ネズミの類いだってそうだ。なんで「エコ」をいいつつ彼らは「駆除」の対象なのか?

トトロの森を守れ,東京湾の干潟を大切にしよう,サンゴの海に基地なんてとんでもない,豊かな里山こそ日本人の原風景です…。似たような物言いを追いかけて来ると,言っても本人ももしかしたら気がついていない「ホントのコト」が見えて来る。つまり「エコロジストが『大切にしたい自然』って『ニンゲンに都合のいい,ニンゲンにとって快適な自然』なんだよね」ということが,である。

著者の花園先生は陸水生態学の専門家,つまりは湖沼,河川などの生態系を研究しているヒト。この本で先生は,上のような……なんてんですか,ニンゲンの身勝手な自然観というか,われわれが「自然」というとき影のようにつきまとって離れない「ニンゲンにとってココチいい」という言外の限定みたいなものを次から次へガラガラドシャーンとちゃぶ台返ししてくれる。

南アルプスでシカが増え過ぎ,いわゆる「お花畑」を構成する貴重な高山植物,ミヤマキンポウゲやホソバトリカブトなどが食害されている。これらの植物が食われたあとに生えてくるのはシカが食わないマルバタケブキ…。これを聞いて多くのヒトが「マルバタケブキはシカに負けない強い植物」という印象を持つらしいが,それは逆,彼らは「シカにライバルを食ってもらわないと繁栄できない」くらいのチカラしかない植物なのである。それがシカの増加という環境の変化によって捲土重来我が世の春を迎えただけのことではないの。

「自然」という言葉から「ニンゲンにとって都合のいい,ニンゲンにとって快適な」という言外のニュアンスをはぎ取ってみよう。するとまさしくこの本の題名通り「自然はそんなにヤワじゃない」のである。太古の昔,恐竜が絶滅してぽっかりあいた生態系の穴をほ乳類が多様化して埋めたように,時間はかかるかも知れないが生態系の間隙は必ず埋められる。

問題はその新しい生態系のなかにニンゲンの入る余地があるかないか,なのであり,環境破壊の問題の核心は「地球にやさしい★△◎■」なんて夜郎自大かつ上から目線の話ではない。ニンゲンは,自らの所業によって自らを地球の自然,生態系の連鎖から弾き出してしまうほどバカなのか違うのかちゅうことやんけ。終章ちかくで紹介されている映画「アフター・デイズ」の結び。「地球に人間はいらない。だが,人間には地球が必要なのだ」という言葉のなんという重たさよ。

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2016年07月31日のつぶやき




posted by hiro fujimoto at 00:01| Comment(0) | 日記