2016年08月28日

映画レビュー 「後妻業の女」 鶴橋康夫監督

後妻業の女
コワい役を振られた大竹しのぶは想像を絶するほどコワい。

あ,いや,もちろん彼女は現代日本を代表する女優の一人なので,かわいい役の時はかわいいし,はかなげな役の時ははかない。わけなんだけど,コワい役のときの彼女はそういう次元ではなくて,なんつかスーパーサイヤ人になってシュワシュワ言ってる悟空が「さらにもう一段の変身が可能だ」というあれみたいにコワいのだ。

で,この映画の彼女はそのモードである。

武内小夜子,63歳。盟友・柏木(豊川悦司)が主宰する結婚相談所の婚活パーティで「若くして夫を失った熟年女性です。好きなことは読書と,夜空を見上げること。わたし,尽くすタイプやと思います」と自己紹介する彼女は,これまでに元害虫駆除業・元木(六平直政),元不動産会社社長・津村(森本レオ),元テレビ局役員・武内(伊武雅刀)などと結婚,その死を看取り遺産を手にしてきた「後妻業」の女。

現在彼女が付き合っているのは元短大教授・中瀬(津川雅彦)。籍は入れていないものの「内妻」として遺産相続の公正証書に判を貰った小夜子は一緒に散歩に出た中瀬を炎天下に放置,脳梗塞を起こさせる。そして病院に駆けつけた二人の娘,尚子(長谷川京子)と朋美(尾野真千子)に「お葬式のお金がないんです〜」。元大学教授の葬式なんだから400万は掛けたい,わたしが200万出すから娘二人で200万出してくれ,と切り出す。

やがて中瀬は身罷り,葬儀も終わったそのあと,娘二人は小夜子から「全財産を小夜子に譲る」と書かれた遺言公正証書を突きつけられて愕然。主婦で世間知らずの姉・京子はおろおろするばかりだが,独身,一級建築士として自らの事務所を構えている朋美はいきりたつ。高校時代の同級生で弁護士をやっている守屋(松尾諭)に相談すると「その女,『後妻業』だな」と言われ,元警察官だという興信所職員・本多(永瀬正敏)を紹介される。依頼を受けた本多は早速小夜子の過去を洗いにかかるが…。

うーん,全編に横溢するなんつか「ナニワ的本音感」がたまらない。金持ちの老人と結婚して看取る(まぁ「殺す」わけだけど)ことを「功徳や」と言って憚らない小夜子,そのキャラに内心舌を巻きながら「儲けは折半」といただくものはがめつくいただき,しかしその金を若いホステスたち(水川あさみ,樋井明日香)にまんまと吸い取られる柏木,朋美から依頼を受けながら,調査結果をネタに後妻業コンビを強請ろうとする本多,そして小夜子が次のターゲットと狙う不動産王・船山(笑福亭鶴瓶)。

弁護士役の松尾諭だけでなく,余貴美子,柄本明も出番こそ少ないが軽くはない役柄で出てくるせいか,後半のある瞬間には小夜子の顔がゴジラに見える。大阪を舞台にしたゴジラならアンギラスが付き物ですな。さぁ誰がアンギラスか…は劇場でどうぞ。

「後妻業の女」公式サイト


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2016年08月27日のつぶやき
















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2016年08月27日

ブックレビュー 「凍った地球-スノーボールアースと生命進化の物語」 田近英一著

凍った地球
スノーボールアース理論,すなわち地質学的な証拠から過去に地球は赤道までぜんぶ凍り付いたことがあるらしいという学説については,かなり以前に「日経サイエンス」(いや,当時はただの「サイエンス」だったかも?)で読んだ記憶があって,この本の存在を知ったときには「ああ,あの学説もどうやら市民権を得たというか,プレートテクトニクスや隕石による恐竜絶滅みたいに「荒唐無稽だがホントらしい」いうことになったのかな,と思った。

買うことにしたのは副題にある「生命進化の物語」って部分に眼がいったから。あれ,だって地球が凍り付いたのは20億年前とかの,まだ地球に生命が生まれてたか生まれてないかわかんない頃の話ではなかったっけ,と。

その方面に不案内なヒトのために(オレだって観てたわけぢゃないが)ざっと地球の歴史をおさらいすると,この惑星はだいたい46億年くらい前に出来上がった。そっから約6億年,これを冥王代というんだが,の間のことは地質学的な記録がほとんど残ってなくてわからない。オレは勝手に「きっとドロドロで何も固まらなかったんだな」とイメージしてるんだけどね。

40億年前になってようやく…神話風に言えば重いものは下に固まり軽いものは上に浮かんで,一応研究対象となる標本みたいなものが残るようになる。これがざっと15億年で「太古代」と呼ばれてる。それに続くのが「原生代」の約20億年。地球最初の生命はこの期間に誕生し,なにがあったのか知らないが,約5億4200万年前になって突然,異常といっていい進化・多様化を遂げた。

これを一般に「カンブリア爆発」といい,こっから現在までを「顕生代」と…地質学的にはいうんだけど,生物史を考えるとそれぢゃあんまり大雑把すぎるだろってんで,この「顕生代」の中身を「古生代」「中生代」「新生代」と分け,それでもまだ足りなくなって「古生代」を「カンブリア紀」「オルドビス紀」「シルル紀」「デボン紀」「石炭紀」「ペルム紀」に,「中生代」を「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」に,「新生代」を「古第三紀」「第三紀」「第四紀」に細分化してる。

でだ。

この本によれば,上の原生代前期の約22億年前と,後期にあたる約7億年前の二度,地球は全球凍結,すなわちスノーボール状態となり,そしてまたそのことが生物の進化に多大な影響を与えた,どころかもしこの全球凍結時期がなかったらワレワレは今こんな風に人類ヅラしてこんな本を読んだり酒飲んで酔っぱらったりうるさい選挙カーに悩まされたりしてなかったかも知れないのである(最後のはその方がよかったか)。

なんで地球全部が凍り付くなんて現象が起こりえるのか,とか,どんな証拠が確かにそれがあったことを示しているのかとかいうコマカイことについては実際に読んでいただくしかないが,そこから算出されるハビタブルゾーン(地球のような惑星環境が実現するであろう母星からの距離)の狭さ(0.95〜1.37天文単位…1天文単位は太陽から地球までの距離)にはココで戦慄していただこう。金星(0.72)は太陽に近すぎ,火星(1.50)は遠すぎた。

結論から言えば,ホンマに我々は生きてるだけで宝くじに当たったみたいな存在なのである。だものもう一度は当たらないよ,普通。

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posted by hiro fujimoto at 08:42| Comment(0) |