2016年07月26日

映画レビュー 「故郷よ」 ミハル・ボガニム監督

故郷よ
1986年4月26日,ウクライナの美しい町プリピャチで若いカップルが結婚式を挙げた,新郎はピュートル(ニキータ・エムシャノフ),新婦はアーニャ(オルガ・キュリレンコ)。5月1日の労働祭の日に開園し,その日は市民が無料で招待されることになっている遊園地。空を見上げるレーニンの銅像の前で記念写真を撮っていると突然激しい雨が。一同は笑いさざめきながらつましくも温かな祝宴の会場へ……。

ところが宴もたけなわ,アーニャが皆に囃されながら「百万本のバラ」を歌っているところに森林火災発生の報せが入る。今日くらい休みをもらって,と懇願するアーニャを置いて,消防士のピョートルは仲間とともに出かけてゆく。……そしてそのまま,二度と帰らなかった。

同じ日,6歳の息子から昨日2人で植えたばかりの林檎の木が枯れていたと聞かされた原発技師アレクセイ(アンジェイ・ヒラ)に電話が入る。プリピャチから3キロのところにあるチェルノブイリの原子力発電所で事故が起きたという。守秘義務に縛られてそれを公表できない彼は妻子を無理矢理避難させ,飼い猫の口に毒を押し込むのだった。

翌27日,酪農を営むニコライ(ヴャチェスラフ・スランコ)は飼っていた蜜蜂が巣箱のなかで全滅していることを知って愕然とする。やがて白い防護服を着た男女がクルマでやってきて,何の説明もなしに退去命令を申し渡す。連れて行こうとしたペットは殺される。一方放射能測定器をコートに隠して街をうろつくアレクセイは,市場でありったけの傘を買いこみ「この雨に濡れるな」と道行く人に配るのだった。

そして28日,モスクワはチェルノブイリ原発で事故があったことをラジオで公表。強制退去のバスの中には昨日病院で夫の死を知らされたアーニャとその母の姿があった……。アレクセイは発電所付近で消息を絶ち,退去を拒むニコライの家には軍人がやってきて家畜に銃を向ける。

そして10年後……。

原発30キロ圏内は立入禁止とされていたが,実際には応急措置として原子炉を覆った通称「石棺」の補修作業員,彼らに食事を提供する食堂の従業員,そしてその家族などが住んでいる。そして廃虚と化したプリピャチの街にも不法に住み着く難民が……。

アーニャはフランス語を学び「チェルノブイリ・ツァー」の観光ガイドとして月の半分を故郷プリピャチで過ごしている。パトリック(ニコラ・ヴァンズィッキ)というフランス人の恋人,夫の親友だったディミトリ(セルゲイ・ストレルニコフ)の2人に求婚されているが……。

16歳になったヴァレリー(イリヤ・イオシフォフ)は慰霊祭のために母と訪れたプリピャチで父を探すため逃亡,かつて住んでいた家の壁にアレクセイへの伝言を書き連ねる。そしてそのアレクセイは精神を病んだままもはや存在しないプリピャチの駅にむかって列車に揺られ続けていた。

声高に反原発を訴えるわけではない。それどころか原発推進派のヒトがこれを見たら「ほら,10年も経てば普通に暮らせるようになっているぢゃないか」と言うかもしれない。が,そう思うかも知れないヒトを含めて観るべき映画だ。そして自らに問うて欲しい。自分の故郷がある日こうなってしまったら?

「故郷よ」をAmazonで検索。


posted by hiro fujimoto at 08:22| Comment(0) | 映画

2016年07月25日のつぶやき








posted by hiro fujimoto at 00:01| Comment(0) | 日記