2016年05月06日

映画レビュー 「ルーム」 レニー・エイブラハムソン監督

ルーム
女性を誘拐して監禁する…と言うと,つい先頃発覚したばかりの千葉大の学生が少女を2年に渡って監禁していた事件に思い至るが,同種の事件としてはかつて新潟で,9歳で誘拐された少女が実に9年2ヶ月の間,犯人宅に監禁されていたという事件もあった。

映画はそういう事件の被害者の監禁場所「部屋」で始まる。そこに住んでいるのは5歳になったばかりの少年ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)とその母親ジョイ(ブリー・ラーソン)。ジョイは17歳のときにこの部屋の持ち主ニック(ショーン・プリジャース)に誘拐され,妊娠させられてジャックを産んだ。

そういう事情なのでジャックは外の世界を何も知らない。起きて,体操をして,ご飯を食べて,TVを観て…TVに映るのはジャックにとって「嘘」の世界だ。週に一度,ニックがセックスを求めて部屋にやってくると,ジャックは戸棚の中で寝なければならない。その冬,ニックは失業し,ジョイはジャックの栄養状態を案じている。

そんなある日チャンスがやってくる。ニックが電気料金を払えなかったのか,夜間の暖房が止まったのだ。ジョイは病死を偽装してジャックを外の世界に出そうとする。「ジャック,よく聞いて。ママの名前はジョイ,この『部屋』の外にはTVに映ってるのと同じホントウの世界があるの。あいつは死んだと思ってるあなたをトラックの荷台に乗せるから,最初に停まったところで降りて逃げ出すの…」。

そしてトラックの荷台の上,身体を包むカーペットから自由になったジャックは四角い天窓に切り取られていない「空」を初めて見て混乱し,恐怖する。それでもなんとかトラックを降り,出会ったヒトに助けを求め運にも恵まれてついに彼とジョイは「あの『部屋』から自由になれたはず」だったのだが…。

予告編だけ観て「監禁からの脱出」を扱ったサスペンスだと思うヒトもいるかも知れないが,この作品の主題は実は「脱出のあと」,長期の「監禁」が原因の PTSD にある。「普通の世界」を全く知らなかった5歳の少年よりも,自分が何を奪われているか,いたかをきちんと解っている母親の傷の方が深いという現実。

この映画を見て冒頭に挙げた類似の事件の被害者たちを思い出し,彼女らのその後が安寧であれと祈ったのはオレだけではあるまい。エマ・ドナヒューの原作「部屋」にならった5歳の少年ジャックの独白をそのまま使ったナレーションも吉。

「ルーム」公式サイト

posted by hiro fujimoto at 18:20| Comment(0) | 映画

映画レビュー 「ピザボーイ 史上最凶のご注文」 ルーベン・フライシャー監督

30minutes_or_less
82分と尺は短いが,これがなかなかの傑作なんですよ。

題名の通り,主人公ニック(ジェシー・アイゼンバーグ)はミシガンの小さな町に住むピザ屋の配達人,30分で届けられなければピザ代はいただきませんというあの方式の店で,年がら年中期限を守れずその損金を給料からさっ引かれている。

恋人のケイト(ディシャド・ヴァサリァ)は就職が決まって街を出て行くとと言うし,それがきっかけで彼女の兄貴で親友のチェット(アジス・アンサリ)に交際(というか一度だけ寝たこと)がバレて絶交状態にと八方塞がりのある日,もっととんでもない不幸が。

注文されたピザを持って廃車置き場に行くと,待っていたのはサルのマスクをかぶった二人組,その正体はアホのドウェイン(ダニー・マクブライド)とその腰ぎんちゃくトラヴィス(ニック・スウォードソン)。

厳しくケチなドウェインのオヤジ(フレッド・ワード)を殺し,その遺産を使って街の大物になるという野望に向けての第一歩に,ピザの配達人を脅して殺し屋に払う10万ドルを調達させるという…こう書くと回りくどいが観てればすぐにそれとわかる天下御免の杜撰な計画。

とにかく哀れニックは組み伏せられクスリを嗅がされ眠らされ,目覚めると身体には時限爆弾つきのベルトが巻かれ,10時間以内に銀行強盗をやって10万ドルを持ってこい,その爆弾はケータイの遠隔操作でも爆破可能だから警察に行ったらそこでドカンだからな,と言われてしまう。他に頼る者もいないニックは絶交中のチェットに助けを求めるのだが…。


馬鹿馬鹿しくも良くできた脚本(特にニックとチェットが挑む銀行強盗のくだりは傑作,映画史上こんなにリアルでかつ笑える銀行強盗シーンはなかったんぢゃないか)。若いが達者,しかも役にハマリきってる俳優たち。「ソーシャル・ネットワーク」でザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグに「フェイスブック? もうオレはヌケたんだ」と言わせる楽屋落ちなど遊び心も吉。

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posted by hiro fujimoto at 07:34| Comment(0) | 映画

2016年05月05日のつぶやき






















posted by hiro fujimoto at 00:01| Comment(0) | 日記