2016年05月05日

ブックレビュー 「移行化石の発見」 ブライアン・スウィーテク著

ikoukaseki
単行本のオビにはこうあった。「ダーウィンが見つけ得なかった『中間形態の化石』が,いま次々と発見されている」。

どっから話をはじめようかな。なんつか我々は,自分がガキのころに受けた教育・勉強がいつまでも「最新のもの」だと考えがちである。でもね,オレたちが勉強してない間も化石は発見され研究は進んできたのである。テレビや携帯電話だけが進歩したわけぢゃないのである。

例えばオレが少年時代に読んだ(題名は正確ぢゃないと思うが)「マンガ人類の歴史」みたいな本では大雑把に,人類は「猿人(アウストラロピテクス・アフリカヌスとか)→原人(ピテカントロプス・エレクトス)→旧人(ホモ・ネアンデルターレンシス)→新人(ホモ・サピエンス・サピエンス)」てなミチスジで進化してきた,ことになっていた。

で,オレと同年代で子供のころにこのテの本を読み,それ以降そういう方面に興味を持たずディスカバリーチャンネルも観ず日経サイエンスも読まずに今日まで生きてきました,ああ談志がなくなって改めて昭和が終わったような気がしますね,ズズ(お茶をすする音)というヒトの多くは,あの本で得た知識をいまだに確固たる事実と信じている。ヘタすると風呂に一緒に入った時とかに偉そうに子供に説明とかしちゃってるかも知れない。

が,違う。ピテカントロプスは随分前に人類に組み入れられていまは「ホモ・エレクトス」になってるし,旧人ネアンデルタールと新人クロマニオンはヨーロッパで同時代に共存し,交雑していたと考えられている。

約12,000年前(日本でいうと縄文時代である)まで,インドネシアの一部で遥か昔に我々と枝分かれしたらしい人類ホモ・フロレシエンシス(ホモ・ネアンデルターレンシスの近縁種だと考えられている)が狩りをしたりして生存していたこともわかっている。

吃驚でしょ?

ちょっと乱暴な説明になるけど,オレたちが子供のころの古生物学ってのはまだ発生学や遺伝学の研究成果をキチンと組み込んでなかった。

が,1970年代から徐々にそうしたものを視野に入れた研究がされるようになり,新たに発見された化石だけでなく,既に研究され結論が出たことになっていたものについてもその視点から見直されたりして,今まで謎だったいろんなことが解明されつつある。いまや古生物学は科学の中でも日々とんでもなくダッシュな展開を見せてる学問で,この本はその成果の一部を素人にも解るように紹介してくれているわけなんだな。

もうね,どの章,どのページをめくってもクリビツテンギョウほんまかいなの連続なんだが,なかでも「ええ,もうあれ,違うってわかったの?」と思ったのはあの映画「ジュラシック・パーク」の主役(だよね?),ヴェロキラプトルには羽根が生えていたって話(2007年に発見された化石の前肢にその痕跡があった)。ティラノサウルスにも羽根とまではいかないが羽毛みたいなものが生えてた可能性があるそうなのである。

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posted by hiro fujimoto at 21:12| Comment(0) |

映画レビュー 「フラメンコ・フラメンコ」 カルロス・サウラ監督

フラメンコフラメンコ
あの「タンゴ」のカルロス・サウラ監督である。タイトルも「フラメンコ・フラメンコ」である。つうことは 1995年の「フラメンコ」の続編……劇映画ぢゃないので続編ぢゃないか,でも続きですよね,新展開でもネクストジェネレーションでもヴォイジャーでもいいが……ちょっとスタートレック混じった?

とにかくこの作品,1995年の「フラメンコ」にも出演してた大御所たち,マノロ・サンルーカルとかホセ・メルセー,パコ・デ・ルシアたちに加えて,新しい世代のミュージシャン,ダンサーたちのパフォーマンスが全部で21のセグメントにわたって「炸裂」する。

その21の演目を順に紹介することもまぁ,できなくはないのだが,でもフラメンコ全般に詳しくないニンゲンが付け焼き刃でそういうカタログ的なレビューをしても見苦しいだけだと思うし,なにより面倒くさいのでやめておき,とにかくこのパフォーマンスだけは見逃すな,というものだけをご紹介。

とにかく度肝を抜かれるのはダンサー,サラ・バラスの「我が娘,サリータへ」の踊り。これだ,これがフラメンコだよ,と思うと同時に,この踊りというか音楽まで含有した文化が,一時イベリア半島を席捲したイスラム文化の影響を色濃く残していることも感じさせる。繋がってますよ,確かに。

ディエゴ・アマドールとダビド・ドランテスの「フラメンコ・ピアノの連弾」も聴きもの,つうか,フラメンコたらギターでしょという常識頭を切開してかき混ぜられるくらいの迫力と美しさ。この演奏は(他のもそこは見どころなんだけど,これは特に)カメラワークにも注目。

そして新世代ダンサーの代表格,イスラエル・ガルバンの独り舞台「静寂」。これもすごい。なんつかこのヒトのダンスには,「踊りで表現できること,表現されること,表現されているとこちらが感じられることという,踊りを観ているトキの構図」を描き変えられるような快感がある。

ああ,そう書くとバビエル・ラトーレが振り付けた6人の女性ダンサーによるパフォーマンス2本(「聖週間」と「時」)もすごかったし,ミゲル・ボベタの歌に合わせてエバ・ジェルバブエナが雨(わざわざ舞台に降らせているらしい)の中を踊る「子守歌とコーヒー」も見応えあったなぁ。

ほんでなんと言ってもパコ・デ・ルシア。出てきた瞬間には「ああ,爺さんになったなぁ」と思ったが,ギターから音が出始めるともうそこはパコの世界。若い連中に囲まれて実に楽しそうにギターを奏でる「フラメンコの神」。この映画公開の4年後逝去。合掌。

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posted by hiro fujimoto at 13:00| Comment(0) | 映画

映画レビュー 「レヴェナント」 アレハンドロ・イニャリトゥ監督

レヴェナント
19世紀初めのアメリカ北西部,毛皮を求めて極寒の山野に遠征中のハンター・チームはネイティブ・アメリカン,アリカラ族の襲撃を受け川に逃れる。追撃を避けて砦に戻るには未踏峰を含む山を越えるしかない。隊長アンドリュー・ヘンリー(ドーナル・グリーソン)は,チームの先導役を勤めるベテラン・ハンター,ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)のこの進言を容れる。

が,不安のなかの野営の翌朝,偵察に出たグラスは子連れのグリズリーに遭遇し瀕死の重傷を負ってしまう。彼を担架に乗せての山越えは不可能。ヘンリーはやむを得ず,グラスの息子ホーク(フォレスト・グッドラック)とグラスを師と仰ぐジム・ブリッジャー(ウィル・ポールター),そしてハンターのジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)にグラスの死を見届け埋葬してから本隊の後を追うよう命じる。

日ごろからグラスと折り合いが悪くホークがグラスとポーニー族の女との混血であることを卑しんでいたフィッツジェラルドは,コトを早く済ませるべく,若い二人の目を盗んで動けないグラスの息の根を止めようとする。気づいたホークが父親を守ろうと彼に立ち向かうが返り討ちに。死体を隠し,戻ってきたブリッジャーにホークがいなくなったと告げるフィッツジェラルド。

ブリッジャーに手伝わせ,息子が殺される一部始終を目撃していながら声も出せず意識を失ったグラスを雑に埋葬したフィッツジェラルド。二人が消えてしばらくしたのち,雪と泥の下で息を吹き返したグラスは這い回って息子の死体を見つけ,取りすがって涙を流しながらフィッツジェラルドへの復讐を誓う。そのためにはまず生き延びなければ…。

マイナス20°という環境でオールロケ,しかも人工照明を使わず自然光だけで行うという過酷,かつ贅沢な撮影は文字通り「やっただけの効果」をスクリーンに再現している。ディカプリオの「これでも貰えないんならもう金輪際アカデミー主演男優賞なんて欲しくない」と言わんばかりの鬼気迫る演技の影でカタキ役トム・ハーディがまた実にいい仕事。これはまさしく「映画館で観ないと」って映画です。

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posted by hiro fujimoto at 07:55| Comment(0) | 映画

ブックレビュー 「犯罪」 フェルディナント・フォン・シーラッハ著

犯罪
うーん,この本をどう紹介したらいいんだろ。

オビのアオリを書き写せば「欧米読書界を驚嘆せしめた圧巻の傑作!」で,クライスト賞,ベルリンの熊賞,今年の星賞というドイツ国内の文学賞三冠王になったんだそうなのだが…ワタシもそうなのでそのワタシの書いてるものを読んでるあなたもきっと,そういうなんつか「ほらほらよくわかんないけど権威スジからの評価も高いのよこれ」みたいな惹句にココロ動かされたりはしないように思う。でも,そのテの賑やかしみたいな宣伝文句を使わないと「とにかく面白い」以上のことを書くのがとっても難しいんですこれ。

形式,というのかな,ありようとしては,弁護士である語り手(「私」として登場,名前はたぶん一度も呼ばれない)が,自分の関わった「事件」に関して語る短編集である。で,それらの「事件」は,書名の通り離婚調停問題とか損害賠償問題とかではなく「犯罪」に関わるもの。ほとんどのエピソードは,主役(つまり犯罪者ですけど)となる人物が件の犯罪をやっちまうまでがまず語られ,「私」がその弁護の依頼を受け,あれこれと「弁護活動」をし,結果としてまぁ妥当な判決がくだされる…というふうに進む。

あ,でもあの「ペリー・メイスン」みたいな法廷劇ぢゃない。「異議あり!裁判長,検察官は被告に偏見を抱いています!」「異議を認めます」みたいなヤリトリは出てこない。ひょっとするとあれってアメリカだけぢゃないのかとオレ思ってんだけどね。

「私」はまぁ普通の弁護士だ。われわれが「まぁ弁護士ならそうなんぢゃないの?」と思う程度に正義感に溢れ,政治的にはちょいリベラルで,態度は穏健。過去の事件でココロに傷を負っているアル中でもなければ,TVのバラエティ番組に出て名前を売り,いずれはベルリンかフランクフルトあたりの市長に立候補したいと思ってる野心家でもない。

出てくる犯罪者たちもほとんどは「ただの人」だ。普通の暮らしをしていたはずなのにコトに当たって,本人としてはまぁ最善と思われる(端から見てるとそうでもないんだけど,本人がそう考えるのは理解できないでもないというくらいの)「選択」を繰り返していったら我知らず犯罪者になってました,みたいなただの人たち。

何十人も殺した殺人鬼や,女性を殺して食ったオトコ,信者を集めて毒ガス作らせて地下鉄でまいたり,一国の経済政策を担当しながら自分は住所外国にしておいて当の国に税金払わない…あ,これは犯罪ぢゃないのか,というようなイカにも特別なヒトビトの話もそれはそれで興味を引くがこういう面白さは感じない。

ここに描かれているのは日常の,ほんの少しのひっかかりに爪を立ててめくってみちゃったらとんでもないことになっちゃったという類いの「明日は我が身」の物語なのである。完璧に見える風景写真なんだけど,よーく観ると端のほうに小さく写った女の子の尻にシッポが生えてる,みたいな小説,と言えばまぁ遠くないかな?

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posted by hiro fujimoto at 05:00| Comment(0) |

2016年05月04日のつぶやき








posted by hiro fujimoto at 00:01| Comment(0) | 日記