2016年05月31日

映画レビュー 「テンペスト」 ジュリー・テイモア監督

テンペスト
ジュリー・テイモア監督がシェイクスピアを撮るのは「タイタス」(原作は「タイタス・アンドロニカス」)以来。あれが「シェイクスピア作品中もっともショッキング」であれば,今度はシェイクスピア最後の作品で最高傑作とも言われる「テンペスト」である。

いや,上の「最高傑作とも言われる」つうところはまぁチラシにある宣伝文句の受け売りで,オレ自身がそう思ってるわけぢゃありません。つかオレ,シェイクスピア全作品を読んだわけでもないし。ただ,この「テンペスト」はなぜか学生の頃に読んでて,その掟破りなラストに,ひゃあ,シェイクスピアって筒井康隆みたいと思った憶えが。

12年前,ミラノ大公だった実の姉プロスペラ(ヘレン・ミレン…原作ではプロスペロー,男です)を陥れ,当時3歳だったその娘ミランダ(フェリシティ・ジョーンズ)と共に絶海の孤島に追放しその地位を奪ったアントーニ(クリス・クーパー)は,その陰謀に加担したナポリ王アロンゾー(デヴィッド・ストラザーン)らと共に嵐の海で遭難する。

実はこの嵐は復讐に燃えるプロスペラが配下の妖精エアリアル(ベン・ウィショー)に命じて彼らに見せた幻覚,彼らは衣服も濡れぬままいくつかのグループに分かれて島のあちこちに流れ着く。

皆とはぐれて一人きりにされたナポリの王子ファーデナント(リーヴ・カーニー)は,ミランダに出会って互いに恋に落ち,その父アロンゾーと野心溢れる弟セバスチャン(アラン・カミング),12年前プロスペラの命を救った賢人ゴンザーロー(トム・コンティ)と共に森を行くアントーニは,エアリアルの術で突然眠りに落ちた王と賢人を見て悪心を起す。

島の反対側ではプロスペラに島を奪われ,以降その奴隷としてこき使われている怪物キャリバン(ジャイモン・フンスー)が道化師トリンキュロー(ラッセル・ブランド)と酔っ払いの酒蔵係ステファノー(アルフレッド・モリナ)と遭遇。酒を飲まされたキャリバンはこの「神の水」にすっかり魅了され,ステファノーにプロスペラを殺して代わりに島の主になってくれと懇願する…。

「タイタス」でもそうだったんだが,単に「戯曲を映画に翻案する」のではなく「戯曲を戯曲のまま映画にする」というテイモアの方法論…いささか古めかしく聞こえる修辞に満ちた台詞回しや,舞台と同じように当の相手の面前で視線をそらし「…するつもりだな」というぐあいに喋る独白などの表現に違和感を覚えるか異化効果を感じるかが評価の分かれ目かな。

ワタシは後者なんだけど一個だけ残念だったのは,上にも書いたように読んだ時オレが「筒井康隆か」(考えてみれば筒井先生のほうが「シェイクスピアか」なんだけど)と思ったメタフィクショナルな結末が歌でごまかされていたこと。ま,ライブである演劇と記録(レコード)である映画との違いと言えばそれまでなんだけど,これぢゃ知らないヒトにはこの戯曲のホントの凄さが伝わらねぇぢゃん,と。

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posted by hiro fujimoto at 09:33| Comment(0) | 映画

2016年05月30日のつぶやき










posted by hiro fujimoto at 00:01| Comment(0) | 日記

2016年05月30日

映画レビュー 「レスラー」 ダーレン・アロノフスキー監督

レスラー
ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得し,アカデミーにも二部門でノミネートされたスマッシュヒットだが,なかなか日本公開が決まらずやきもきさせられたいわくつきの作品,いえ,プロレス・ファンにとっては,ですけど。

80年代にはマジソン・スクエア・ガーデンを満員にしたこともあるプロレスラー,"ザ・ラム"ことランディ・ロビンソン(ミッキー・ローク)。すっかり衰えた現在はニュージャージーでトレーラーハウス住まい。ウイークデーにスーパーマーケットでアルバイトをしつつ,週末に近郊で行われる試合,あるいはファンの集いに出場している。

ある日の試合のあと,控え室で心臓発作を起こし,病院に運び込まれて心臓のバイパス手術を受けたランディ。「適度な運動ならお勧めするが,レスラーとしてリングに上がるなんてとんでもない」という医者の言葉に気弱になり,馴染みのストリッパー,キャシディ(マリサ・トメイ)の助言を受けて永らくほったらかしにしてきた一人娘のステファニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)に逢いに行く。が,ステファニーは全盛期に家族を顧みなかった父親を許さない…。

いや,これ,マジにスゴイっすよ。とにかく当年57歳のミッキー・ロークの「盛りを過ぎたプロレスラー」がハマリ役。Webサイトの解説によれば,監督のアロノフスキーがロークの主演を主張し,ニコラス・ケイジを推すスタジオ側と対立。遂には制作費の大幅カットさえも受け入れてローク出演を守り抜いた。それを聞いたロークの友人,ブルース・スプリングスティーンがノーギャラで書いた「ザ・レスラー」(「Working on a Dream」所収)が主題歌だってんだから,ほとんどナニワブシであります。

対戦シーンでロークの相手をするのは現役,あるいは引退して間もないモノホンのレスラーたち。ハンディカメラを多用してレスラー達に密着,試合前や試合中のウチアワセ(「そろそろフィニッシュ行くぞ」とか)や,隠し持ったカミソリで自分の額を切って流血するなど,80年代に「ケーフェイ」と言われてた部分まで見せるリアリティったら!

全国3千万の(昔フルタチが言ってた数字は2千万だったっけ?)プロレス・ファン…特に古手のプロレス・ファンには是非観て泣いていただきたい。

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posted by hiro fujimoto at 08:25| Comment(0) | 映画